国籍奪われた離散の民(読売)

ホーム > なんみんニュース > 311メモリアル集会

 2011年の民政移管後、世界中から資金が集まり、「アジア最後のフロンティア」と言われるミャンマー。4月にアウン・サン・スー・チーさんが来日し、翌月には日本の首相として36年ぶりに安倍首相が訪問、関係強化も進む。軍事独裁時代の弾圧から逃れて日本で暮らす推計3000人以上のミャンマー人の中には一時帰国できた人もいるが、国籍を奪われ、根無し草の生活を送る人たちも約200人いる。イスラム系少数民族のロヒンギャ族だ。


 軍により数千人の市民が犠牲になった1988年8月の民主化運動。群馬県館林市に住むアブドラさん(42)=仮名=もこの運動に参加した一人だ。当時は高校生。故郷のラカイン州でデモをして村を回っていると、軍から銃撃されて友人は死亡、アブドラさんは10日間身柄を拘束され、暴行を受けたという。この運動後、ロヒンギャ族への弾圧はいっそう強まった。


 迫害から逃れ、マレーシア、インドネシアを転々とした後、7年前に偽造パスポートで日本に入国した。2度の難民申請は却下され、国籍がないため強制送還もされない「仮放免」の身分。仕事にも就けず、NPOからモスクに届く支援物資やカンパが頼りで、病気になっても治療費に事欠く。「何で日本に来てしまったんだろう」「泥棒でもやれというのか」--。仲間と集まると、不満が口をつく。


 インドネシアで結婚し、子供ももうけたが、不法入国を密告されて身の危険を感じ、日本へ向かった時に現地に置いてきた。民主化の進む祖国は、アブドラさんにとってあまりに遠い。

 

 今年3月、インドネシアに行ったボランティアが娘から手紙を託された。

 

<お父さん、元気ですか。私はもう中学生です。小学校1年生の時にお父さんがいなくなってから、とてもさみしいです。ずっとずっと待っています……>

 

 何度読んでも、悲しくなって読み通せない。「家族に会いたいよ」。アブドラさんは絞り出すように言うと、両手で顔を覆った。(文 冨田大介)

〈ロヒンギャ族〉
 バングラデシュとの国境に近いミャンマー西部ラカイン州を中心に住むイスラム系少数民族。ミャンマー国内の推定人口は約80万人。1982年の市民権法で国籍を剥奪され、移動や結婚を制限されるなどの差別を受けている。少なくとも50万人以上が迫害を逃れようと国外に脱出している。

[読売新聞社 2013年8月26日(月)]
 

ホーム > なんみんニュース > 311メモリアル集会

Japanese